忘れもしない7月中旬(日付は忘れた)のこと。場所は僕の店だった。
9月に芝居したいんですよねー
そう言ったのは平野隆士。僕たちの「哲学者の午睡」という芝居でソクラテスという身勝手でわがままで人として最低な役をやってくれた彼である(本物のソクラテスはそんな人じゃないっすよ、念のため)
へえ2ヶ月後じゃん、頑張ってね。
完全に他人ごとだった。
見に行くよ、楽しみにしてるね。
いたってフツーのことである。
しかし、僕はそこで気づくべきだった。彼は「やるんですよね」とは言ってない。「やりたいんですよね」なのだ。
脚本がないんですよねー
そーゆーことかっ 2ヶ月後なのに、まだそこかっ!
1時間弱くらいの尺(上演時間)で稽古も極力少なくしてやりたいんですよねー
書けってことか・・・ これはそういう流れだな。流れに逆らって生きてきたからこそ、この流れは分かる。
そして今こそ流れに逆らうべきだと感じる。
まあ、手持ちの脚本はいくつもある。短いものもけっこう持ってる。適当に見繕ってあげようかと答える。
言うなれば流れに片足を突っ込んでしまったのである。
しかし思った以上にその流れは急流だった。それを別の言葉でいうなら「隆士の芝居への熱さ」である。
僕はこの「芝居の熱さ」を持ってる奴が好きで、彼の熱さに完全にほだされた。
気づいたら新作を書き下ろすという話にまとまっていた。
全員スーツで決めつつ「カッコ面白い」というコンセプトまで考えてしまった。
演出がいないんですよねー
知らん。そこまでは知らん。隆士プロデュースなんだから自分がやれ。
思った以上にその流れは急流だった・・・
かくして、僕はわずか2ヶ月で新作の作・演出で舞台を作ることになったわけです。
まあでも、そこはわたくし、才気煥発・才能過多・器用貧乏・支離滅裂。書いちゃうんだなぁ10日で。
久々のワンシチュエーションコメディ。
いやーやっぱり楽だわ。空間旅団の台本がどんだけ知恵熱爆発で書いているか身をもって分かりました。
空間旅団の台本が頭の体操ならぬ「頭のSASUKE」であるなら
今回は「頭の遊園地」
と言うわけで、脚本家としてはいい仕事が出来たなと思っておるわけです。
ラスコーリニコフのババ抜き、どうやら「ラスババ」という略称らしいです。
「ラスコ」でもなければ「ニコ抜き」でもないらしい。
バカなワンコメなのに、ラスコーリニコフとか言っちゃうとこで空間旅団風味もちゃんと入れてるところが我ながら抜け目なし。
僕はもう率先してコメディは書かないと決めている。それは世代がはるか下のお客様に僕の面白いと思うセンスが通じるのか不安だからである。そういう意味で、今回は一つの試金石かなぁ。
ウケなきゃ「まあそうだよね、分かってたよ、俺」とスカシちゃうし、
ウケれば「あ、俺まだやれんじゃん」って勘違いしちゃうし。
どっちにしても、楽しみである。
さて、もうすぐ稽古が始まる。果たして、どこまで脚本をぶっ壊してさらに面白く出来るか。
脚本は自分との戦いだが、稽古は役者との戦いである。
そして本番はお客様との戦い。
今月いっぱいは、気が抜けない。
劇場はとってもとーっても狭いとこで客席も少ないので、
チケットはお早めにね。
ではでは。