鎮西八郎 源為朝、とは…

鎮西八郎 源為朝、とは…

You Tubeでこんな動画を見つけてしまった。

佐賀県上峰町PR

「佐賀県上峰町公式チャンネル」

ここがなんと源為朝のアニメを作ってる。アニメ制作「Production I.G.」、主題歌ユニコーン、声優も豪華。ホントに市で作ってるのというくらいめちゃくちゃクオリティが高い。地上波アニメ並みやん。

毎月一回、五分ほどなので続きが待ち遠しい。

で、この鎮西八郎為朝である。

懐かしいなと思う。実はこの為朝は僕の大好きな武将で、舞台の脚本を書いたことがある。

平安時代末期の武将で、源頼朝、義経の叔父にあたる。身の丈七尺、剛腕で大の大人が五人がかりで引く弓を軽々と扱ってみせたという弓の名手。まるで三国志の英雄、関羽や張飛のようだ。日本の武将で三国志並みの表現をされる人はなかなかいない。

源家だからなかなかの家系なわけだが、体が大きくけっこうな暴れ者で、京都で大暴れした結果父親(源為義)から九州に行けと追い払われてしまう。

これで反省するかと思いきや、九州の豪族たちを次から次にやっつけて仲間にしてしまう。

京都では、為朝がヤバいって話になり呼び出すことにする。

為朝の仲間は「これはきっと罠で、兄貴殺されますぜ」と止めるが、「父親が俺のせいで官職クビになったらしいから行ってくるわ」と仲間数人を連れて上京。

お前さあ、やり過ぎなんじゃねえの?と京都で出世していた兄義朝に怒られるが、どこ吹く風。とりあえず殺されないならいいやーという感じ。

そんな時、後白河天皇と崇徳上皇が喧嘩して「保元の乱」が起こる。為朝は崇徳上皇側に、兄の義朝は後白河天皇側につき、兄弟で戦う羽目になる。

有名な話だが、為朝は九州でさんざん戦いをしてきた。「こういう場合は夜襲に限る。不意打ちかけて敵の寝首をかきましょう」と進言するも、味方は「そんな卑怯な真似はできんでおじゃる」と却下。マジかよ~と思ったところへ、敵が夜襲をかけてきた。

だから言っただろーと嘆きつつ、為朝は九州から着いてきてくれた味方を失いながらも獅子奮迅の活躍で敵をなぎ倒していく。

結局保元の乱は後白河天皇の勝利で終わり、為朝は傷を負いながら何とか逃げ出す。しかし、治療のために湯治をしていたところを追手に見つかり捕まってしまう。

同じく崇徳上皇側だった父親為義は殺されてしまった。こりゃ俺もかな、と思ったところ、命は助けられて伊豆大島に流罪となり追放。そこで大人しくしてるかと思いきや、やはりここでも大暴れ。あっという間に伊豆七島を制覇してしまう。

やっぱ言わんこっちゃないということで、朝廷から為朝討伐の船が大群でやって来る。

為朝は自慢の大弓(弓張り月)で応戦。大弓で射掛けると、300人乗りの船が撃沈したというから、ほんとに三国志並の戦いである。

しかし為朝の戦いもここまで。最後は息子ともども自害して果てる、というのが歴史らしい。上記のアニメもここまでを作るんだろうと思うが。

ここまでなら、多くの悲運の武将の一人だ。豪胆で強い武将は数々いる。

実は、源為朝はこの先が面白い。

僕が舞台化したのも、この先なのだ。

「伊豆七島で為朝は死なず、琉球(沖縄)に渡って再び大暴れし、その息子舜天が琉球王国の初代王になった」

という伝説があるのだ。

しかもこれは琉球王国の正史「中山世鑑」にも書かれている。

そして実際にこれを元に江戸時代の曲亭(滝沢)馬琴が「椿説弓張月」としてベストセラーにし、後に三島由紀夫が歌舞伎用に戯曲を書いている。

今でも沖縄には「源為朝公上陸之趾」という碑があるし、為朝岩と呼ばれる岩もある。

(義経が北海道からモンゴルに渡りチンギス・ハーンになったという伝説よりもよほど信憑性がある)

で、僕はこの「椿説弓張月」を元に脚色し、以前在籍していた劇団の解散公演に描き下ろした。伊豆七島編と琉球編の二部作で、40人以上の登場人物のため三時間近くの大作になった。

僕の作品には珍しく「伝記アクション」というジャンルで、呪術を使う敵やら怨霊やらが出てくる何でもありな作品になった。

僕はこの為朝と同じくらい平将門も好きで(将門のことを書かせたら終わらない…)どちらも舞台化させてもらったことになる。この二人に共通するのは「めっぽう強くて朝廷からは嫌われていたが、民には優しくて慕われていた」ということ。

九州に追い払われた時、最初に行った場所が今の佐賀県上峰町、つまりアニメを作った市である。伊豆七島では今でも「ためともさん」と呼ぶ習慣があるそうだ。

暴れ者で困った奴だと思われていたのに、実は民からは慕われ愛されていた。

将門も同じ。

しかし歴史は勝者が作る。為朝も将門も強すぎたため朝廷から恐れられ朝敵とされ、ちゃんとした評価を得られずにいる。

歴史は教科書の裏側こそ面白い。

コメントを残す