前回スリランカの映画で騙されたという話を書いた。
実は映画絡みで騙されたのは、スリランカだけではない。
実はもう一回騙されている。前回でおいしい話は転がってないと学んだばかりじゃないか、と言われそうだが、今回はおいしい話ではなかったので騙されたのであるwww
さて、こっちは実際に映画化されて形にもなっているので、仮名にしてもバレるのだが。
タイトルは「17歳のシンデレラ」
ことの発端は、長年の仕事仲間のO氏からだった。O氏は僕がお世話になっていた俳優さんからの紹介で、映像監督さんだ。僕より10歳以上年上だが気が合って映像系の仕事を一緒にさせてもらっていた。
O氏が俳優養成学校で講師をしていて、生徒を使って短編映画を撮るとなった時、僕が脚本を提供したり、ロケ地として僕の店を貸したりした。新人監督の映画祭実行委員もやっていて、構成台本なども書かせてもらっていた。僕のもっとも信頼する人で、この人の頼みなら結構無理してでも引き受けていた。O氏的にも、困ったときの沢崎頼みみたいなところがあったんだろうと思う。
そのO氏が上記の「17歳のシンデレラ」という映画のラインプロデューサー(制作進行)をしていたのだが、ある日僕に泣きついてきたのだ。
「脚本がひどすぎて、とてもじゃないが映画にならない。沢崎くんの力で脚本のリライトしてもらえないか」という相談だった。
人の脚本に手を入れるのは好きじゃないのだが、とりあえず読ませてもらって考えると返事をする。すぐにメールで送られてきて読んでみた。
「た、確かに、これはひどい… ど素人だな、こりゃ」
という代物だった。すぐにO氏に連絡をして感想を述べた。下手すぎて話にならん、と。
監督はどう言ってるのかと聞いたら、このシナリオで撮影開始して、都度直していく気持ちらしい。シナリオ無しで撮影をしちゃう一昔前の香港映画じゃねえんだから…
しかしO氏的には、それでは時間もかかるし俳優も迷惑だ。しっかりしたシナリオを提供したいのだという。まあそりゃそうだ。
しかし、このシナリオではリライトどころではない。イチから書き直したほうが早いんじゃないかというレベルだ。車で例えるなら、このシナリオにはタイヤもなければエンジンもない。屋根もない、ライトもない、ハンドルもない。車の形をした箱だ。
それを走るようにしてくれというのは無茶だ。
その頃のメールを見返すと、最初に連絡が来たのが2017年9月1日だった。しかも台本を印刷しないといけないから来週には欲しいとのこと。
え? って話である。
映画のシナリオを一週間で書く?
数ページの書き足し、直しレベルではない。初めから書くわけだ。
当時の僕は、昼間は声優養成所で仕事をして、夜は自分の店に行くという生活。書いてる時間なんかありゃしない。でも他ならぬO氏の頼みだ… 引受ざるを得ない。
しかも、書き直し作業中に監督から電話が来るのだ。
書き直してもらうなら、ああしてほしい、こうしてほしい、新しい登場人物を入れてほしい、このセリフを入れてほしい… リクエストだらけ。
しかも、この話のテーマは「大腸がんと免疫療法」なのだ。監督が母親を大腸がんで亡くしてるから一際思い入れが強い。そのレクチャーを二時間近く電話でされる。しかも、見てほしい映画がある。そのDVDをO氏に渡すから受け取って見ておいてほしいときた。
あの… あと数日で書かなきゃいけないのを分かってるのかね、この人、という感じである。
結局僕は昼間の仕事も休み、店も予約のない日は全部休み、ラスト3日間は不眠不休でシナリオを書き上げた監督の要望もできる限り入れ込んだ。過去メールから、9月8日に台本を送ったらしい。何とかギリギリ印刷には間に合ったようだ。
シナリオを渡してから翌日の朝まで15時間ほどの記憶がない。多分倒れるように寝たんだと思う。
別に自分の頑張りストーリーを書きたいわけではない。
問題はここからだ。
まず僕のギャラ。今回はO氏からの依頼ということだったので、実は制作予算に僕のシナリオ代は入っていなかった。なのでO氏の個人払いなのだ。
請求書をO氏の会社に送って欲しいと言われ、僕は約束の15万円の請求書を送った。
当然ながら未払いである。今日現在まで。
そして前回のKK氏同様、連絡がつかず行方が分からなくなった。
KK氏の場合はまあしょうがない。一緒に仕事したこともない人だったのだから、信用した僕が悪かった。
でもO氏は違う。何年も何回も一緒に仕事をしてきた仲である。信用も信頼もある。こんな無茶振り、O氏でなければ引き受けていなかった。昼間の仕事も夜の仕事も休んで、ぶっ倒れるスケジュールで約束果たして、15万は安い。でも金の問題じゃない。
それまでの信頼関係がたった15万で切れちゃうの?
15万程度で逃げるの? 電話もメールもLINEも無視って、長年の仲間をそんな簡単に裏切れるものなの?
「これからも別件でギャラの発生する仕事振って一万円ずつ上乗せするから、何とかそれで相殺してほしい」って言ってくれれば、僕は水に流したのに、そんなことも言えずに逃げちゃうの?
僕は人生であんなに愕然としたことはなかった…
そして映画の方である。上映はされたらしい。
らしい、というのは、僕に連絡がなかったから。なぜなら、脚本に僕の名前はなかったのである。
脚本のところにはしっかり監督の名前が書かれていた。
僕が死ぬ思いで書いたシナリオは、なかったことにされたのである。もしかして、僕への依頼はO氏経由だったから、監督は知らなかった?
んなわきゃない。電話で散々シナリオの中身の注文してきたじゃないか。僕が書いたってこと知らないわけがない。監督自身が書いたわけじゃないってことは自分自身が一番わかってるはずじゃないか。百歩譲って「共作」くらいの配慮はあってもいいんじゃない?
しかも「第16回モナコ国際映画祭では最優秀脚本賞と特別賞を見事ダブル受賞しています」だってさ。
よくもいけしゃあしゃあと書けるよなあ…
まあ、モナコ国際映画祭がどんなもんか知らんけど、僕レベルの脚本家が突貫工事で書いたものが受賞できるんだから、たかが知れてるとは思う。
O氏にしても、この監督にしても、どうしてこんな人でなしな事が出来るんだろう…
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沢崎版「17歳のシンデレラ」シナリオ (12 ダウンロード)というわけで、ギャラも貰ってないので、僕の「17歳のシンデレラ」シナリオの著作権は僕にあると思います。それを公開しておきます。
映画本編に使われたシナリオも貰ってますが、さすがにそれはUP出来ません。細かいところは直されてますが、概ね僕の脚本と同じです。(まあでも、あのクソ長い脚本を87分にしてるみたいだから、かなり端折られてるんだろうとは思う)
別にいまさら恨み言や怒りもないけど、ただただ、信用していた人に裏切られもう二度と会うことはない、それだけが悲しい話でした…
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